外出許可
ネフローゼ症候群で入院中の長男が自宅に戻ってきた。
といっても一時帰宅である。
それも以前のように自宅に泊まりで戻るのではなく、外出という形で朝から晩までの日帰りという形であるが。
尿蛋白の数値はそれなりによくはなっているものの、継続的な検尿が必要なため、夜は病院に戻ってきて欲しいということからこのような形となった。
泊まりはできないが、それでも自宅に戻れるというのはありがたい。
過去自宅に戻った時に数値が悪くなるということもあったので、毎日一旦病院に戻るというのは安心できる部分もある。
まあ、息子は泊まりたいと思っているだろうが。
条件は朝の検尿で蛋白尿が出ないこと。
これが条件であることを長男にもきちんと伝えていた。
土曜日は、蛋白は陰性。一日家で弟と時には喧嘩をしながら楽しんだ。
昼は私が作ったスープから作ったラーメン(もちろん塩分は薄くしてある)、夜は妻の作った唐揚げ。
病院に戻った時に、看護師さんにこの日の出来事を嬉しそうに話していたのがとても印象的だった。
「明日も行けるといいね」
「うん、明日も蛋白が出ないといいんだけど…」
というやりとり。
「ちゃんとわかっているんですね。偉いですね」
看護師さんは私にこう話して行った。
日曜日。
朝起きると検尿である。
息子はいつもとはちょっと様子が違っていた。
「父ちゃん。緊張する」
そうだろう。このおしっこで家に帰れるかどうかが決まるのだから。
もしかすると私の緊張が移ってしまったのかもしれない。なんとなく感じたのだろうか。
尿からは微妙な泡立ち。
あれ?まさか…
その後、看護師が来て結果を伝えてくれた。
「今日の結果なんですけど…±でした…」
-ではない。ということは完全なる陰性ではなかった。外出の条件をクリアできなかったのだ。
息子はこの状況を一瞬で理解した。
そしてベッドにうつ伏せになって動かなくなった。
私は長男が本当に悲しい時は静かに泣くことを知っている。いつもは泣きわめくくせに。
それを見ている自分も涙が出てきそうになる。
「病院で仮面ライダーギーツ観るか」
「今日お昼カレーライスだって」
テンションの上がりそうな言葉を並べても全く反応なしだった。
1時間後くらいだろうか。この日の当番の先生が回診に来た。
「±は陽性ってことではないから、まあ外出させてもいいでしょう」
塞ぎ込む長男を案じたのだろうか。まあOKだろうという判断をしてくれた。
そこからの準備の早いこと早いこと。あっという間に着替えて準備完了。
いつもこのくらい素早く着替えてくれよ。
「父ちゃん、早く車近くに持ってきて。待ってるから」
わかってるよ、急かすなよ。
帰ることが本当に楽しみだったんだね。
ということで、何とか二日間自宅で過ごすことができることになったのだ。